2011年03月10日

【ふみよむ日記】物欲より人欲


 「コント55号」の坂上二郎さんが亡くなった。2003年
に脳梗塞を患うも軽度で済み、根気よいリハビリで舞台復帰し
た。昨夏、再び脳梗塞の症状が出たが、ここでも芸人魂で正月
の明治座公演を目指した。でも体が思うように動かず出演取り
やめ、そしてこのたびの訃報となった。

 テレビのお笑い番組といえば、私の世代だと「コント55号」
は鮮明である。欽ちゃんの突っ込み、二郎さんの明るいボケは、
今思えば二人の頭の回転のよさ、絶妙の相性から生まれた質の
いいコント、後味のいい笑いであったと思う。後々の、二人の
振り返りのコメントを聞くと、「いい相棒」を超越した、お互
いの「敬い合い」があったのだとわかる。
 二郎さんは、最期まで欽ちゃんの突っ込みを大きな支えに、
再起に希望を持ち続け強く生きたのだと思う。

 「セルフ・ネグレクトが増えている」という話題をニュース
で読んだ。「ネグレクト」とは、親の育児放棄を指す言葉だが、
そのネグレクトが自分に向かい、自分の生活を放棄するのが
「セルフ・ネグレクト」だ。たとえば食事はいいかげん、着替
えもしない、風呂にも入らない、掃除もしない。自分のことが
どうでもよくなる。一人暮らしのお年寄りがそういう暮らし方
に陥ることが増えているという。虚しさが毒となるのだ。

 少し前まで「ふーん」で流してきた「老い」の話題に、見て
見ぬふりできなくなっている。わが親が、いつでもその話題の
当事者となり得るし、その次は自分。だけど、自分だけはセル
フ・ネグレクトなんてならない、なるわけない、と思っている。
でも、もしこの先自分が「虚しさ」という毒にさらされたら、
本当に「ならない」かどうか、それはわからない。

「虚しさ」の毒を回避するには、人がいる。心と頭の潤滑油は、
読書や趣味より、人との接触がいいに決まってる。目の前に人
がいると、こぎれいにしていよう、おいしいものを作ろうと思
う。来客が多いと、家の中は効率よく片つく。暮らし方を考え
る。頭が回る。人生には自分を写す鏡が必要だ。家族、何でも
言い合える友人。そのうちの、だれが、いつ、死んでいいよう
に、多くはいらないが複数いる。「人欲」である。

 母親が「そろそろ身の回りを片つけないとね。こうも物が多
いと、私が死んだ後、あんたらに迷惑だしね」と、言って片つ
けを始めた。自分の物欲は他人に迷惑、そして物への固執は神
様、仏様に叱られる。でも「人欲」なら赦してもらえるんじゃ
ないかな。かさばらないし、ごみも増えない。人は一人で生き
ていけるけど、孤独では生きられないんだ。



(2011.3.11vol.204)



エリア: ふみよむ日記
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